信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会
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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School
of Medicine
2000.7.5 宮澤
概 念
慢性関節リウマチは慢性の破壊性変形性関節炎であり原因は不明とされているが@異常免疫反応(型コラーゲンに対する自己抗原)A遺伝因子Bウイルスが考えられている。病変の主座は関節にあり、同時に多彩な関節外症状を呈する。我が国におけるRA患者の男女比は、1:3〜4と女性に多く好発年齢は30〜40歳、約50万〜60万人の患者がいると考えられている。
診断基準
アメリカリウマチ協会の診断基準(ARA、1987年版)
1,少なくとも1時間以上持続する朝のこわばり
2,3個以上の関節の腫脹
3,手、中手指関節、近位指関節の腫脹
4,対称性関節腫脹
5,手・指のX線変化
6,皮下結節
7,リウマトイド因子陽性
1〜4は6週間以上持続。
以上の内4項目をみたすものをRAとする。
症 状
関節症状・・・手指の変形、圧痛、熱感、運動痛、機能障害
*顎関節症状は初発ではほとんど認められない。また、全経過をみても頻度としてはかなり少ないといえる。
関節外症状
@全身症状
37℃台の微熱、全身倦怠感、易疲労感、体重減少
Aリンパ節腫脹
Bリウマトイド結節
深部皮下組織にでき、骨膜や腱鞘と癒着している無痛性結節
C肺病変
胸膜炎、間質性肺炎、肺線維症、結節性肺病変、BOOP(閉塞性細気管支炎)
D眼病変
上強膜炎、虹彩炎、虹彩毛様体炎
E神経症状
末梢神経障害(末梢知覚神経障害、混合性知覚・運動神経障害)
圧迫性神経障害
頚髄病変
Fリウマトイド血管炎
G心症状
心膜炎、心筋炎、弁膜病変
H腎病変
I全身性アミロイドーシス
J潰瘍性病変
Kその他
甲状腺、筋、肝臓
歯科治療時における注意点
1,慢性関節リウマチ患者に対する投薬上の注意点
@抗リウマチ薬、非ステロイド系鎮痛消炎剤、ステロイドともに胃腸障害高頻度に認められ、歯科治療時の重複投与はさける。主治医と相談のうえ胃粘膜への影響の少ない鎮痛消炎剤として徐放剤やプロドラッグ、あるいは、プロスタグランジン生合成酵素COX-選択的阻害剤(ハイペン)の使用も1つのてである。
A腎機能障害を伴う場合、アミノ酸配糖体系抗生剤の使用は避け、他の薬剤も腎排泄の薬剤は適宜減量する。
Bステロイド剤の服薬状況を確認する。
ステロイドカバーの必要性*外科等の処置にたいする抗生剤の術前投与は通常どうり。人工関節置換が行われている症例では人工関節に2次感染を引き起こす可能性が報告されているので予防投与必須(抜歯、スケーリング、切開等)
2,関節の機能障害と歯科的問題
*頚椎の環軸関節の亜脱臼がある場合頚部の後屈により四肢麻痺を生じる場合があるのでヘッドレストに注意
*関節の痛み、こわばりは午前中のはやい時間帯に多いので、治療は午後にする
<参考文献>
慢性関節リウマチ、有病高齢者歯科治療のガイドライン
歯科におけるくすりの使い方、有病高齢者歯科治療の実例集
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